人気ブログランキング | 話題のタグを見る

出会いさまざま

昨年11月に結婚されて、僕の店で友人や職場の仲間たちによるお祝いのパーティをしてくださったHiroyuki&Ikumiさんカップル。お2人で迎えた初めての正月はいかがでしたか?

Hiroyukiさんは以前、おじさんから見合いをすすめられたことがあったそうです。でも、まだ結婚する気のなかった彼は、相手に会うこともなく見合い話を断りました。それから10年程が経ちました。いつまでも結婚しない彼におじさんはまたもや見合いをすすめました。さすがにHiroyukiさんは素直に応じました。相手はもちろんIkumiさんでした。2人は迷うことなく結婚へのスタートをきりました。
それだけなら、よくある見合い結婚です。しかし、2人の場合はちょっと違っていました。
実は、10年前におじさんがすすめた見合いの相手もIkumiさんだったのです。おじさんは、よほどIkumiさんのことが気に入っていたのでしょう。
それにしても、この10年の間にIkumiさんが結婚していたらどうなっていたのでしょうか。
なにやら、2人は結婚するように運命づけられていたのではないかと思ってしまいました。

人と人の出会いはさまざまです。そして、不思議な因縁のようなものをも感じさせます。
Ikumiさんが結婚パーティに僕の店を選んでくださったのは、1昨年彼女の友人が同じように結婚パーティを僕の店で開いてくださり、その出席者の中にIkumiさんもいたということからのようです。
Ikumiさんの友人のパーティがあった後、出会いの不思議さにエッセイを書きました。またもや、『にんげん曼荼羅』からです。

『にんげん曼荼羅』(2008年7月)
                      出会い


6月末、あるカップルが新しい人生に向かってスタートした。
ホテルでの披露宴の後、友人や職場の仲間たちが私の店に集まってお祝いのパーティが開かれた。祝福の歓声の中で瞳を輝かせる2人を見ていて、人と人の出会いの不思議さに深い感慨をおぼえた。

あの日、4年前の1月2日、彼と彼女のそれぞれの仲間たちが酒場に繰り出さなかったら・・・。どちらかのグループが別の店に行っていたら・・・。2階席にいた彼のグループの一人が、1階席にいた彼女のグループの中の知り合いに、「一緒に飲みませんか」と声をかけなかったら・・・。
おそらく、2人の結婚はなかった。

忘れられない出会いが私の店であった。
それは店にかかってきた一本の電話から始まった。
「マスター、明日の新潟アルビのチケットが2枚あるんだけど、だれか行く人いないかしら。私行けなくなっちゃって」
電話は10数年来の常連Kさんだった。
「だれかに当たってみようか」
そう言って電話を切ったが、いきなり仕事を休んでサッカーの観戦に出かけるような人物は思い浮かばない。

やがてカウンターに農業の研修をしている2人の男性が座った。しばらくすると若い女性二人が空いていた彼らの隣に腰をかけた。女性たちは初めての来店で、もちろん農業青年たちとは面識もない。寡黙な彼らと、軽い緊張を見せている彼女たちとの間に会話が生まれる様子はなかった。

突然、店のドアが開いて、kさんが飛び込んできた。
「チケット持ってきたからだれかにあげて。無駄になってもしかたがないわ。車で来たから今日は飲めない」
Kさんは言い置くとサッと帰って行った。
私は客たちにチケットをかざした。
「だれか行かないか?」
だが、客たちはだれ一人として興味すら示さなかった。私は隣り合っている男性と女性にターゲットを絞った。
「君たち、2人で行ったらどうだ?仕事は休めないか」 
男性がようやく重い口を開いた。
「僕行ってもいいですが・・・」

あれから5年も過ぎただろうか。その男性と隣にいた女性は、翌日サッカーの観戦に出かけた。そして2人は今、2人の子どもの父と母である。

サッカーのチケットがキューピッドになって誕生したカップルの顔をKさんは知らない。
Kさんが出会いに恵まれずに、いまだに独身なのも皮肉なことである。


Kさんは昨年暮れ、10数年来恒例になっている忘年会に来てくれました。今年こそいい出会いがありますように・・・。

 

by yoyotei | 2010-01-11 00:09  

<< 酒賛歌 一枚の絵 >>