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瀬をはやみ岩にせかるる滝川の・・・

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 賑やかな一行が帰った後、片付けをしていると、「よろしいですか?」の声とともに一組の男女が入店した。
「どうぞ、どうぞ」
「一杯だけ飲ませてください。30分もしたら帰りますから」
 だが、言葉通りにはならなかった。一杯が2杯になり、2杯は5杯になった。30分の予定は2時間を越えた。
 佐渡市真野の曹洞宗種徳院の住職Honmaさん夫妻との出会いだった。
 話はインドの仏跡巡りからミャンマーの旅、南伝仏教と北伝仏教との違い、上座部部仏教と大乗仏教と続いた。さらに話題は、原発、死刑問題から「大阪維新の会」批判にまで及んだ。
「私が金科玉条としているのは諸行無常ということです」と、自身のモットーを開陳して話は終わったが、その間、終始よどみのない穏やかな語り口。色白の奥さんが、合いの手のように短い問いをはさみ、それにも答える。
 有名私大に7年間在籍、アメリカ滞在、雑誌の編集者などを経て、生家の寺を継いだのだという。その経歴の豊かさは話の深さ幅広さからもうかがえた。
 「佐渡に来られることがあった連絡を下さい。ゆっくり飲みながらまた語り合いたいです」と住職は言い、電話番号を残して行かれた。大型連休前半、旅の客からもらった有意義で濃密なひと時だった。
 飲み屋稼業の役得のひとつは、代金までもらって「いい話」を拝聴できることだ。
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「学道の人は、自解(じげ)を執(しふ)することなかれ」(道元『正法眼蔵随聞記』)
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 タケノコのシーズンが到来した。わずかに先端が覗いたものを見つける。一雨来ればまさに「雨後の筍」であちこちに、むっくりと土を押しのけて姿を現すだろうが、しばらく雨はない。
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 前回、ソイと書いたら釣り仲間からカサゴではないかと電話をもらった。そうだろうと私も思う。ちなみに私が少年時代を過ごした島根県の日本海沿岸ではボッコウと言った。ソイもカサゴもフサカサゴ科に属する。その科目には下関辺りでタケノコメバルと呼ばれる魚もいる。タケノコの時季が旬ということだろうか。
 釣り仲間からは、釣れた場所からエサ、仕掛けまで、詳細な情報提示を求められたが、まだ釣果の報告はない。
 この日は27センチの大物も釣れた。朝方、1時間ばかりの釣果だ。

 冒頭のHonmaさんのお寺は「種徳院(しゅとくいん)」という。なにか引っかかるものがある。突然、小倉百人一首の「瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思う」を思い出した。崇徳院の和歌だ。この和歌をネタにした「崇徳院」という落語もある。こちらは「すとくいん」と読む。 

by yoyotei | 2012-05-02 18:06  

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