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佐渡へ佐渡へと草木もなびく

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 この日曜日は一人暮らしの高齢者たちと食事会だった。14人ほどの集まりで、この日は新入会員2人の歓迎会でもあった。もちろん酒も飲む。世話役の人が歌集を作ってくれて、抒情歌や歌謡曲を歌った。伴奏は私のギター。酒を飲みながらなので、ほとんど店でのノリだった。
 私の隣には昭和8年生まれのMinekoさんが座った。結婚もせず、子どももいない彼女は愛犬と暮らしている。そのMinekoさんが広告チラシの裏に書いた短歌を見せてくれた。
 
  電波でネ妄想化させる世の中はやめてと願う老犬のタカ(タカ)
  これでもネこれでも不足と人間は己もつぶし地球もつぶす(タカ)
  地球もネ世界もひとつそこに住む人人人の心は(も)ひとつ(ムック)
   
 タカ、ムックは愛犬の名前だ。愛犬たちと語り合いながらMinekoさんの視線は厳しい。

 犬よりも血も涙もなき人間が平成に入り増え続けてゆく(ほうれん)

 ほうれんはMinekoさんの歌人としての名前らしい。
 この翌日、若い母親が子どもを虐待死させたというニュースが伝えられた。

 この日、私はひとつの提案をした。「みんなで芝居をやりませんか」という提案だ。それも「瞼の母」「一本刀土俵入り」など、特に高齢者にはよく知られた義理人情や恋愛もの。私が選んだのは「佐渡情話」だ。佐渡に伝わる民話を元に、新潟県出身の浪曲師・寿々木米若が台本にして自分で口演し、これがヒットして出世作になったという作品。先日、この浪曲を聞き取り活字に起こした。これをベースに独自の台本を作る。舞台照明の器具はすでに借りる手配ができた。
 80歳のあの人にお光を、76歳のあの人は吾作・・・。配役を考えると、もうそれだけで笑いが浮かんでくる。芝居は役者だけではできない。裏方も重要だ。高齢者といえども何かしら関わってもらう。ああだこうだと楽しみながら、みんなで芝居をつくる。
 こうした私の提案に、たちまち数人の高齢女子が集まってきた。実現できそうな気がする。
  
 佐渡へ佐渡へと草木もなびく 佐渡は居よいか住みよいか 
 歌で知られた佐渡ヶ島 寄せては返す波の音 飛(た)つや鴎か群れ千鳥
 浜の小岩にたたずむは 若き男女の語り合い
「ねえ吾作さん、明日はお別れね。柏崎へ帰ったら、どうせ島で育った私のことなんか、すぐに忘れてしまうのでしょうね」
「馬鹿なことを言うんではないよお光さん・・・」
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 台風が過ぎ去っても、天気がすっきりしない。
 庭の金木犀が満開だ。むせるような、濃厚な香りを放っている。
 10月になった。今年もあと3ヶ月。早い。

by yoyotei | 2012-10-03 10:39  

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