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風鳴りておぞましき雨ぞ降る/罪深き民たちの懺悔の歌が風にのり

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 店の外壁を這うツタが色付いてきた。すでに11月下旬。年齢と時間経過の速度認識には明確な科学的根拠があるらしいが、私は知らない。ただ加齢と共に時の経つのが早く感じられるのは確かだ。今年もあますところ40日を切った。早い。まさに「光陰は矢の如し」だ。時に追い越されていくようだ。
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 11月から「鮭の塩引き」作りに取り組んでいる。今年で3年目になった。マキリ(真切り?)と呼ばれるナイフで鰓(えら)を取り、腹を裂いて内臓(当地ではナワタという)を取り出す。背骨の内側にはり付いている血合い(メフンともいう)を掻き出す・・・。こうした一連の作業を、どうやらよどみなくこなすことができるようになった。
 丹念に洗った後に塩を摺りこんで1週間ほど熟成させる。来月からはこれの塩出しをした後、吊るして寒風にさらすという終盤の作業になる。
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 同じ会社で働くKozueさん(左)とMikiさん(右)。
 Kozueさんはお父さんと来店したこともある。このお父さんが素敵な二枚目キャラ。夭夭亭のバックカウンターから睨みを利かせている二つの大きな面(タンザニアの木工品)と、壁に架かっている鹿のトロフィーはそのKozueさんのお父さんからのプレゼントだ。
 Mikiさんはこの夜、初来店。明るい笑い声が周囲まで明るくする。
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 考えてみれば、タンザニアの面やカナダの鹿のトロフィーのように大きな物でなくても、旅行のみやげなどお客から贈られた様々なものが店のインテリアになっている。海外みやげだけでも、ドイツ、スペイン、トルコ、サイパン、パプアニューギニア・・・。左端のボトルはHideちゃんパパのごく最近のタイみやげ。めずらしいタイ産のラム酒だ。
「店は客がつくる」という真理の一端でもある。
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 Kozueさん、Mikiさんの2人に、この夜は同僚のKirikoさん(女子の中央)が加わっての来店。Kirikoさんはカウンターの中に入ったりしての「にわかママ」体験。カウンターの内と外では見える世界がちがう。心構えもおのずとちがってくる。こちらが客になって眺めると、りっぱな酒場ママに見える。
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 11月10日は恒例の「大滝舞踊研究所」の発表会だった。舞台美術担当としての、今回の仕事は3枚のパネル制作だった。高さが2メートルともなると雨風を気にしながらの屋外作業になる。
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 運搬も容易ではない。ナカムラ自動車で軽トラを借りて会場へ運んだ。出来具合も舞台にのせてみて初めて評価の対象になる。
 何をどのように描くかは私の創作による。カラーベニヤにアクリル塗料でティッシュペーパーを塗りこめて下地をつくり、やはりアクリル塗料で描いた。色数を限定し、彩度を抑えることに留意したが、それも何度かの試行錯誤があってのことだ。金色だけはアクリル塗料が入手できなかったのでポスターカラーを使った。
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 本番前日のリハーサルで踊り手との対面となる。ここからの変更はもう物理的にできない。倒れないように背後にはブロックを置いて重石にした。音楽スタッフからのアドバイスだった。
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 パネル制作の他に今回の発表会では、二つのナレーションと一つの舞台出演があった。舞台は夏に山形県鶴岡市で祝舞として出演した「一人ぼっちの晩餐会」。
 ナレーションの一つ「風鳴りて」のリハーサルで、タイトルを紹介するアナウンサーのアクセントと私のアクセントの違いに気がついた。アナウンサーの「鳴りて」は「鳴(な)」にアクセントを置き、私は「鳴りて」のどこにもアクセントを置かない。「な」にアクセントを置くと「成りて」といった意味にとられるおそれがある。アナウンサーには私の主張を採用してもらったが、本番後もちょっと気になった。
 
 童謡に「靴が鳴る」(清水かつら作詞/弘田龍太郎作曲)がある。

 お手(てて)つないで野道を行(ゆ)けば/みんな可愛(かわ)い小鳥になって
 歌をうたえば靴が鳴る/晴れたみ空に靴が鳴る
 
 この歌のタイトル「靴が鳴る」はアクセントなしの「ナル」だが、歌になるとメロディーでは「ナ」の音が高く「ナ」にアクセントを置いたようになるのだ。 

 舞台の袖で出を待ちながら音楽スタッフと短い雑談をする。
「音で失敗した事あります?」
「ありますよ。本番で音が途中から消えた事とか・・・」
 生ものは何が起こるかわからない。
 舞台が終わり、店を閉店して帰宅すると私宛に素敵な花束が届いていた。 
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 夭夭亭が開店するのを1時間も前から向かいの店で待っていたという安田さんと内山さん。安田さんはかつて新発田市の喫茶店「2楽章」のSuwaさん夫妻たちと来店したことがあった。何年前だろう。やんちゃな青年時代から、一転して奮励努力して会社を立ち上げ、現在は会長職にある安田さん。生きてきた過程を講演することも少なくないという。語り口調は穏やかだが大人(たいじん)の風格がある。悠揚迫らぬというのは安田さんのような人物をいうのだろう。
 内山さんは写真家として村上市ではよく知られた人。長男もその奥さんもかつては常連さん。この数日後、その長男さんが大量の柿を持ってきてくれた。その長男は私にルアー釣りの手ほどきをしてくれた人でもある。雪の中をカンジキを履いて早春の渓流釣りに同行したのもその長男さん。
 安田さんと内山さんは犬(柴犬)の品評会仲間だという。内山さんはHideちゃんとShinちゃんのパパと親しい友人でもある。
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 9月、池袋に「男の季節料理・三太郎」を開業した林さん(中央)と、Takaさん(男子)、Izumiさん(女子)の2人のスタッフ。林さんはアパレル関係からの転身。左はアパレル時代からの林さんの友人Nishiさん。村上出身のNishiさんが私と林さんの縁を取り持ってくれて、開業前に2度ほど来店があった。
 開店から2ヶ月ほどだが客足は好調らしい。スタッフやNishiさんとの対話からも林さんの人柄が伝ってくる。人懐っこい笑顔もいい。情報収集、旺盛な研究心。順調な滑り出しも当然だろう。
 大人4人がちっちゃな軽自動車に乗って遠路をやって来た。ほほえましくて、温かいものが私の中を流れた。Nishiさんはいい人を私に引き合わせてくれた。あっTakaさん、Izumiさんも含めていい人たちと・・・。
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 情報誌『月刊CARREL(キャレル)』(新潟日報事業社)の取材を受けた。過去に2回ほど掲載されたが、今回のコンセプトは「新潟県内のいい酒場を、その店の歴史を含め、お客さんが楽しく飲んでいる写真を絡めながら紹介する」というもの。HideちゃんやYamaちゃん、20数年前に店を手伝ってくれたKastuyamaさん、InagakiさんやMayaも店の雰囲気作りに一役買ってくれた。
 カメラマンの大矢さんは前回の取材にも来たという。私とよく似ているとの客の声にこたえて、取材担当の石川まゆみさんとともに撮る側から撮られる人となった。石川さんは私のブログもほとんど目を通したということだった。見透かされている感じだ。
 掲載は来年の2月号の予定。

 ひと月もブログの更新を怠っていた間に、2人の知人が鬼籍に入った。
 一人はYさん。遺体は大学医学部に献体された。故人の意志だったようだ。当地にやって来て酒を飲みながら、さまざまな刺激を与えられた人の一人だった。
 もう一人は高久義一さん。教師をリタイアした後は保護司として、また旧村上藩士の子孫として城址の維持管理に努めていた。胃を摘出しながら痩躯をものともしないで動き回っていた。私とは市町村合併や自治体問題などで共に活動してきた。どこかに侍の矜持を持ち続けていた人だった。
 2人の生きてきた姿に、死の状況が重なる。生き方は死に方でもあるのか。

 先日、電話で長女と話した。「エンディング・ノート」を用意するから、今のうちに死後の自身の取り扱いなどを書いておけということだった。異論はないし、反対する理由もない。むしろ自分の身辺状況を把握する上でもいいことだと思う。
「いつどうなるかわからないからね」
とは長女の言葉。そうりゃそうだ・・・。 

 

by yoyotei | 2012-11-26 06:37  

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