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潔し蝉仰向けの大往生

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 敬老の日に東京に住む三女から紅白のまんじゅうが届いた。心遣いはありがたいが、「ウウムッ」といった心持であった。高齢者といわれる年齢になっても自分が年寄りだと自覚している人は、それほど多くはないという統計がある。それでも高齢者の割引や優先といった特典はおおいに利用するというのも、その統計の結果だ。私にしてからも、年寄りとは思っていないが、1年前からあるスーパーの「シルバーズデー/買物金額5%割引」のカードを収得して活用している。当初あった抵抗感はすでにない。
 先日、シルバーズデーに同年生まれの知人の女性と、そのスーパーのレジで遭遇した。
「このカード持ってる?」
「持ってるわよ、あたりまえでしょ。でもね、さっと提示してさっとしまうの!」
 バカなことを聞いてしまった。
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 恩師たちが残した膨大な本を収める文庫を作ろうと思い立った開業医の瀬賀弘行さん。私費を投じた、その「大町文庫」が完成した。といっても完成したのは建物だけで、収蔵予定のおよそ1万冊の運び込みは11月末になるようだ。収蔵される本は現在のところ、村上高校で教鞭を執った故八木三男、故大嶋久夫両先生の蔵書だ。瀬賀さんが私に語ったことがある。「知の集積ともいうべきこうした<膨大な書籍に囲まれていたい>」と。体系的な学問、それによって磨かれる知の力。それを信じる瀬賀さんの文庫設立は、数社の新聞やテレビなどが取り上げた。郷土史愛好家のTomokazuさんを中心にして、文庫設立、すなわち瀬賀さんの心意気にエールをおくる集まりのプランが進行中だ。
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 英語教師だった大嶋久夫先生から、私は数十冊もの本を頂いている。本の重みで家の床が傾いてきたというのが、教え子や知人への本の配布理由だと、生前に聞いた。頂いた中に『THE ANNOTATED SHAKESPEARE』という本がある。箱入り3分冊の分厚い本は、「日本には何冊もないと思うよ」と大嶋さんが言ったほどの豪華本だ。英語の記述が理解できるわけでもなく、門外漢の私には、もったいないほどの「宝の持ち腐れ」なのだが、掲載されてある4200におよぶイラストは手元においてページを繰れば興味が尽きない。「大町文庫」に収蔵しようかどうか思案中である。
 大嶋さんとは、高校教師たち数人と書店主に、私も加えてもらって三陸方面へドライブ旅行したことがあった。その旅行の折、シェークスピア研究者と聞いていた大嶋さんに、シェークスピアに関する幼稚な質問をしたが、そのことをずっと覚えていたらしい。それがシェークスピアの英語本を私に、ということになったのかもしれない。シェークスピアの英語本はもう1冊もらっている。
「大町文庫」は、その時に三陸へ同行した大町通りの早川書店さんの真向かいに建った。
「ここから売られていった本が帰ってきますね」
「大町文庫」の建物を見上げながら早川さんに声をかけた。
「うちで取り寄せた本はわずかだったと思うんだがなあ」
と、早川さんは言った。県立村上高校はかつて早川書店のすぐそばにあった。いま、早川さんは瀬賀弘行さんの治療を受けている。「もう酒も飲めなくなったよ」と笑ったが、かつては、いささか乱暴な酒を共に飲んだものである。
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 紹介者がいないと、私の店のドアを開けるには少し勇気がいるらしい。その勇気をふるったふたりだ。近くの銀行に勤めている。ひとりは他県出身で、新潟の大学を卒業後、そのまま新潟の銀行に就職したという。
 ところで、私自身は一度も見たことがないが、銀行を舞台にしたテレビドラマ「半沢直樹」が高視聴率をあげて終了した。主人公が叫ぶ「倍返し」も流行語になるほどらしい。「タテマエとホンネ」「正義」とはなにか。新聞に載っていた放送評論家松尾羊一さんのコラムでそんなことを知った。
 銀行に限らずホンネだけでは人間関係もギクシャクする。正義も過ぎると「きれい事ではすまないよ」という声が聞こえてくる。だが、おのれ欲望や企業利益のために他人を蹴落としたり、正義感が鈍磨してはなるまい。そうしたテーマに鋭く切り込んだ作家の山崎豊子さんが亡くなった。すぐれた作家だったと思う。
「晴れた日には傘を貸すが、雨の日には傘を貸さない」といわれる銀行。だが、一文無し同然だった私が、どうにか生活の基盤をつくることができたのは、銀行の融資が受けられたからでもある。
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 これは一つの事件だ。産婦人科医のYumiさんが結婚して福井県に行くというのだ。この夜は同じ病院の医師たちが彼女を囲んだ。外科、内科、小児科などに研修医も加わって祝婚の酒を飲み、ほぼ同じメンバーはこの1週間後には惜別の酒を飲んだ。
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 翌日は大学の産婦人科の医師たちが、同じくYumiさんを囲んで飲んだ。「人類遺伝子学会」といった言葉が飛び交っていた。
 Yumiさんとはインドつながりで親交が生まれた。話しているうちに初めてのインドの旅が、互いに時期がほとんど同じ、泊まったホテルはまったく同じだったことが判明したのだった。
 数年前にはベトナムへも同行した。ホーチミン市内を流れるサイゴン川を船で渡り、炎天下を何キロも歩いた。2台のシクロ(自転車の乗り物)が「乗らないか」とつきまとったが、Yumiさんはガンとして応じない。どうせ暑さに音を上げて乗るさ、との魂胆が気に入らないというのだ。水郷地帯を小船でめぐってみたいという私たちだったが、詳しい地図もなく、歩いても歩いてもそれらしいところへは行き着かない。暑さと疲労に音を上げたのは私だった。負けず嫌いで頑張り屋のYumi さんも、私の意気地なさを理由に、ついにシクロの乗客になった。懐かしい思い出だ。
 Yumiさんは自分自身の治療をかねて、しばらくは医師の仕事を中断するという。
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 娘のひとりが友だちと東京へ出奔したときに、当時、目黒に住んでいたOotakiさん(中)に世話になったという。今回の来店でそのことをはじめて知った。生きていくためには、さまざまな場面で、さまざまな人に世話になることをあらためて認識した。それにしても、その折にはお世話になりました。
 左はTogashiさん。右は電気店の後継者Hondaさん。
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 上の3人と一緒に来店した老舗料亭能登新(のとしん)の山貝さん(左)と塗装店Takahashiさん。どういうつながりかは聞かなかったが、5人とも家業の後継者たちのようだ。
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 9月の最終日曜日は「2013村上・笹川流れ国際トライアスロン大会」だった。
 数日前から腰痛が出たため、腰に膏薬を貼り鎮痛剤を飲み、コルセットを着用して、30年近く続いている実況放送に臨んだ。今回も地元信用金庫の若手社員たちが手伝ってくれた。昨年は英語の堪能なダンさんとのコラボで、いかにも国際大会らしい実況ができた。今年は、ママになったいつものパートナーMiyakoさんに加えて、JTU日本トライアスロン連合広報チームのMatsuyamaさんもマイクを握った。打ち合わせなし、シナリオなしのぶっつけ本番だが、いい感じの実況ができたと思う。
 1000人ほどの参加者の中には元ヤクルトスワローズの古田敦也さんも・・・。参加者の最高齢は78歳。私よりもひとまわりの年長者が私の目前を颯爽と駆け抜け、笑顔でフィニッシュゲイトをくぐった。その快挙を伝える私は腰を伸ばせないまま「ううむっ・・・」なのである。
 大会の前夜、東京からの大会役員たちと、一年ぶりの酒を飲んだ。オリンピックを初め、トップレベルのアスリートたちを世界の舞台で見てきた人たちの話は興味深い。翌朝、会場で酒気の残ったような顔を合わせるのも恒例だ。
 今回から「村上・大会」の運営は3月に設立されたNPO法人が担うこととなった。日本海の海岸道路を疾走するバイクコース、沿道の声援を浴びながら駆ける城下町のランコース。ファンとリピーター出場者が多い当地の大会だ。出場者から喜ばれ、地元の歓迎が持続するトライアスロンの町をめざすことになった。
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 庭に出るとむせるような金木犀の香りが流れてくる。「謙虚、初恋」が花言葉というが・・・。トイレの芳香剤だという人もいる。
 近所からカボチャとサツマイモをもらった。アケビとミョウガは妻が採ってきた。実生で育った庭のクルミも自然落下したものを拾うのが朝の日課だったが、これは終わった。待っていてももう落ちては来ない。「チビル柿」はいくつも実がならなかった。

 潔く蝉仰向けの大往生
   
 9月18日付け朝日新聞投稿に載っていた俳句だ。新潟・長岡の林美子さんの作品である。とても気に入った。
昨今の社会状況やドラマ「半沢直樹」を念頭におけば皮肉を込めた川柳としても鑑賞できる。死語になりそうな「潔さ」を蝉に学びなさいといわれているようだ。
 路上や草むらで、そんな大往生の蝉を何度か見た夏は往き、中秋の月を眺め、朝晩の冷え込みに衣類を重ねているうちに10月になった。
 2週間前に岩船港の工事現場を釣竿を持って歩いた。太陽が地面を焼いて、土ぼこりが舞う砂利道だった。不意にインドがよみがえった。インドが私を呼んだ気がした。土ぼこりの臭いがインドへつながったのだ。
 友人のジョージは酒を飲むときまって「どこか行こうよ」という。タイを皮切りに、彼とは韓国、ベトナム、インドとアジアの旅に同行した。アフリカ行きの漠然とした予定もあるが、なかなか・・・。

 11月末の「大滝舞踊研究所発表会」の舞台美術の仕事を始めている。3基のガス灯は「その下に娼婦が佇んでいるイメージ」という注文だ。図書館司書の手を借りて、ガス灯が掲載されている本を参照したが、最後にたどり着いたのは、パリに燃えつきた天才画家といわれた佐伯祐三の絵だった。パリの場末、ガス灯と広告文字は佐伯祐三の独特の世界だ。
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                               『佐伯祐三 絵と生涯』(講談社カルチャーブックス)から

 先週末、マイクの「49日」ということで「長ネギ族」が集まった。

 今日は釜爺稼業は非番。秋の柔らかな日差しが、久々の先日の雨で生気を取り戻した草木の緑を輝かせている。これからブナの苗木を抜き取りに行く。仲間たちと畑を借りて育ててきた最後の苗木を、学校の緑化と「鮭の森づくり」事業に役立ててもらうことになったのだ。
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by yoyotei | 2013-10-04 08:13 | メニュー | Comments(0)