カテゴリ:酒( 3 )

 

酒賛歌

 一年に一度だけ毛筆を執ります。店のドアに貼り付ける新年のあいさつです。もとより書を習ったこともなければ、悪筆は自認しています。にもかかわらず数年来、唯一の僕の新年行事になっています。
 今年は元旦早々、筆に墨を含ませました。「頌春」と大書し、晩唐の詩人李商隠から一節を添えました。

   縦使花兼有月 可堪無酒又無人 というよく知られた詩です。
  「縦使(たと)え花有り兼ねて月有らしむるも 堪う可けんや 酒無く又人無きに」

 一週間ほど掲げていましたが、来店の客に目をとめてもらえたかどうか・・・。
「(田舎では、春、様々な花が咲き、夜の月もひときわ澄明で美しい)しかしながら、たとい花があり月が輝いても、共に酒を飲みつつ鑑賞する友がいてこそ、心もほぐれはするが、その酒もなく友も居らず、どうして春の風情に堪えようか」  (注釈・高橋和巳『中国詩人選集15』岩波書店)

 繊細で、ときに退廃的な色彩が濃いとされる李商隠です。この詩には、母の喪によって故郷に帰り、蟄居していたという背景があります。寂寥感が漂いますが、酒場の主人としては、「花より団子」的解釈で、「酒があっていっしょに飲む相手や仲間がいれば最高!」と、きわめて享楽的に新年のあいさつとして使いました。

 酒や飲酒を賛美する詩は古今東西、数多くあるようです。
 なかでも、十一世紀ペルシャの詩人オマル・ハイヤームの『ルバイヤート(四行詩)』は、僕のような商売にはうってつけの飲酒賛歌です。

  墓の中から酒の香が立ちのぼるほど、
  そして墓場へやって来る酒のみがあっても
  その香に酔い痴れて倒れるほど、
  ああ、そんなにも酒を飲みたいもの!

 詩人としてのみならず、哲学、数学、天文学など、多方面にその才能を発揮したハイヤームは、そもそも異民族であったアラビア人の宗教であるイスラム教に対して強い反感を持っていました。唯物論、無神論を根底にした哲学者であった彼は、イスラム教の禁酒に対しても強烈に反抗し酒を讃えたのでした。

  魂よ、謎を解くことはお前には出来ない。
  さかしい知者の立場になることは出来ない。
  せめては酒と盃でこの世に楽土をひらこう。
  あの世でお前が楽土に行けるとはきまっていない。

  酒を飲め、土の下には友もなく、また連れもない、
  眠るばかりで、そこに一滴の酒もない
  気をつけて、気をつけて、この秘密 人には言うな・・・
   チューリップひとたび萎(しぼ)めば開かない。

 人間存在への懐疑、そして厭世的ですが、酒が重要な楽観的アイテムとなっています。
 つぎは僕の好きな二つの詩です。

  われは酒店に一人の翁(おきな)を見た。
  先客の噂をたずねたら彼は言った・・・
   酒を飲め、みんな行ったきりで、
   一人として帰っては来なかった

  恋するものと酒飲みは地獄に行くと言う、
  根も葉もない戯言(たわごと)にしかすぎぬ。
  恋する者や酒飲みが地獄に落ちたら、
  天国は人影もなくさびれよう!

*『ルバイヤート』(オマル・ハイヤーム 小川亮作・訳 岩波文庫 1986)
 「ルバイヤート」は英訳本(イギリス詩人フィッツジェラルド)からの重訳で、明治41年に蒲原有明が日本に紹介したのが最初だそうです。原典(ペルシャ語)からの日本語訳はこの小川亮作が最初とされています。彼は新潟県の村上市周辺の出身だということが近年判明しました。
 昭和22年8月20日に脱稿されています。僕が生まれる9日前でした。関係ありませんね(笑)
[PR]

by yoyotei | 2010-01-12 13:35 | | Comments(3)  

角瓶、そしてインド

しんちゃん 先日は「サントリー角瓶」、発売当初の復刻ボトルありがとう。もうほとんど残っていません。僕が飲みました。「壽屋」、なつかしいですね。かつて酒場ではこの角瓶がカラになると、瓶の模様の筋に沿ってアイスピックで縦に穴をあけて、貯金箱にしたものです。「アイスピック」。僕の店にももうありません。酒場ではブロックの氷をアイスピックで割って使うのが、40年前は当たり前でした。製氷機などありませんでしたから。
復刻ボトルで忘れていたことを思い出しました。

そういえば、角のハイボールは全国的に流行っているようですね。小雪さんがテレビCMで「新潟の夜は角ハイ」とやっていましたが、あのCMは全国でやっていたのですか?僕は新潟だけだと思っていました。もしかすると、「神戸の夜は角ハイ」「青森の夜は、松江の夜は、秋田の夜は」などと、ご当地版CMがあったのでしょうか。

ところで、「酎ハイ」が居酒屋で定番の飲み物になっていますが、あれは焼酎をソーダで割った「焼酎ハイボール」の略ですよね。ウイスキーをソーダで割ったものが「ハイボール」。
半世紀前は「ウイスキーはハイボールに始まってハイボールで終わる」と、通人は言っていたものです。
酒にも流行りすたりがありますが、焼酎をウーロン茶で割って「ウーロンハイ」なんて言うんじゃないよ、とおじさんは思います。「ウーロン茶割り」というのが自然でよろしい。

「壽屋」というと、作家の開口健を連想します。彼は若い頃、壽屋の宣伝部にいたんですよね。
開口健の文章はすばらしい。多様なジャンルがありますが、大阪・新世界界隈での、モツの煮込みだったか、牛筋の煮込みだったかを描写した文章を読んだとき、よだれが出そうになりました。言葉の魔術師だと思いました。
近頃は食べ物の写真などでも、湯気が立ち、匂いまでも伝わってくるようなものがいくらでもあります。しかし、文章による描写がそれらを超えることを、開口健は証明しています。

登美ちゃん 娘さんの鼻ピアス。びっくりしたでしょうね。
「ヘナ(ヘンナ)」というのを知っていますか。植物から採取した天然染料で最近は、日本でも頭髪染料として売られているとも聞きましたよ。
インドでは、そのヘナで女性が手足に模様を描くことが伝統的なおしゃれとして普通です。
昨年、インド土産に持ち帰って、来店する女性客に描いてあげました。10日くらいで消えてしまうというのが、タトゥ(刺青)感覚を体験するにはいいようで好評でした。インドには、そのデザイン画のようなものもありますし、ヘナ師とでもいうような、客の手足に描く専門家もいます。
でも、鼻ピアスはさすがにびっくりしますよね。娘さんの鼻の穴はふさがりましたか?
[PR]

by yoyotei | 2009-11-18 21:53 | | Comments(0)  

今日、入籍をされたカップルが今夜のメインゲストでした。再来週、私の店で二人の祝婚パーティをするのです。
寒い夜でしたが、店内は暖かい空気に包まれました。僕も調子に乗ってギターや三線(サンシン)を弾いて歌いました。カップルが新しい旅立ちをする、その覚悟をお互いが確認しあう。僕はそのことを一緒に喜びたいと思います。
結婚して、しかしその先のことは、誰もわからない。どのようなことが待ち受けているのか。
でも、それは生きている限りみんな同じこと。
「喜びも悲しみも立ち止まりはしない。巡りめぐっていくのさ」(河島英五「生きてりゃいいさ」)
今日歌った歌詞の一節です。

カップルから、二人で行った北海道旅行のお土産をいただきました。小樽のガラス細工、焼酎のお湯割りグラスでした。すばらしく趣味のいいものでとても気に入りました。

11月23日勤労感謝の日が、「夭夭亭」の誕生日です。いよいよ、37年前目に入ります。
37年目に入った最初のパーティが、祝婚パーティ。しかも、いろいろある店の中から僕の店を選んでくれたことがとても嬉しい。
いいパーティにしてあげるからね!ご馳走いっぱいつくるからね。

嬉しい気持ちで来店する客。さみしいから来る客。居場所を求めて来る客。酔っ払って何処に来ているのかわからない客。いろいろですが、まあ、いいでしょう。
酒飲みは百人百態。酒はその人をあぶりだす自供薬。
今夜は嬉しくて、僕が飲みすぎました。
インド話もいいけど、今度は酒の話、酒飲みの話をします。
ウイーッ、酔っ払った。オヤスミナサイ。
[PR]

by yoyotei | 2009-11-18 02:10 | | Comments(1)