犬たちのひと時

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「そやからな、資本主義システムはな、それを批判する思想もまたひとつの商品として流通させて、そこから利潤を上げてゆくわけや。自然破壊はやめなあかんと思いながら、その元凶である都市型生活をやめて自給自足の生活に入ってゆく勇気はなかなか持てへん。その隙間に「森の思想」なんぞちゅうもんが入り込むんや。都市型生活から離れることのでけへん人が書いた「森の思想」が、おんなじように都市型生活から離れられへん人々によって受け容れられて、彼らのこころの罪悪感を癒してゆく。この構造を解明せえへんことには、現代文明をその本質においてとらえることはでけんのや」
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「早い話が、あんたの飼い主からしてそうやないか?ついこの間も、鴨長明なんぞを引っ張り出してからに、仏教思想か出家の思想か知らへんけど、降る雪を眺めて、罪障が降り積もる罪障が降り積もるなんぞとぬかしくさって・・・。おのれの罪障は棚に上げて、降り積もってんのは誰の罪障やねん」
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        「黙っていればキミも言いたい放題ですね。まあ、キミに仏教思想とか無常観などを説くつもりはありませんがね。なにしろ、あなたはこの世に誕生してからまったく年もとらず、ごはんを赤い皿で食べるか黄色い皿で食べるかさえ決められないんです。そうなふうに言うとあなたは、<お皿はみんな同じ色にすべきだな・・・>って負け惜しみをいうにちがいない。はじめから選択肢も設定しないで、迷うことからも考えることからも逃避するのです。わたしは人間の暦ではまだ7、8歳ってとこですけど、犬年齢ではほとんど晩年です。近頃はトイレも近くなって、紙おむつが欠かせなくなりました。そうなって初めて悟ることもあるのです。<ミネルヴァの梟は夕闇に飛び立つ>といいますからね。この文明が続く限り、キミは滅ぶことはないでしょう。でも、わたしは早晩、わたしの主人にしても遅からずこの世の命を終えます。滅びを直視することによって、不滅の力を見出そうとする教えが『般若心経』ですが・・・」
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「ほんでその不滅の力を見出したんでっか?見出せへんからジタバタすんのとちゃうのんかい!この文明が続く限り・・・とあんさんは言わはるけど、わいが言うとんのは、この文明が続くことを憂慮してのことや。人間を含めてすべての生物が他の生物を殺して食い、利用することによって生き延びてきたんやし、これからもそうや。そやのにこの文明は<生命>を直視する視点が弱いんや。また早い話になるんやが、日常的に肉や魚を食うてんのに・・・」
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「そうです、生き物というのはすべて他の生き物の命をいただいて生きています。わたしは特に肉類を好みます。でも、もう長い間生きている動物を自分で殺して食べることはしていません。それどころか、いったいなんでつくられているのかわからない<ぺットフード>が主食になっています」

「あんたはんもそうでっか。わいらビーグルは元はウサギを追っかけていたんや。ウサギを食っていかどうかはもうわからへんけど。それが今では、パワー・ドーナッツで体力をつけたり、ライナスにクッキーあげるからなんて言われてボールを追っかけてるんやから、ほんま洒落にもならしまへん」

「わたしもついこの間までは、中国の宮廷で可愛がられていたのです。それが近頃は飼い主の不景気な顔を見せ付けられてばかりです。おまけに時々は、トイプードルとかいう脚の長い犬がやってきては家中を我が物顔に走り回ります。わたしらの時代はもう終わりのようです。どうです。また、いつものように1曲聴かせてはもらえませんか?」

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「そうでっか、ほんなら・・・」
「今日はどんな曲を?」
「こんなんはどうでっか?」
「ああ、<As  Time Goes By>ですね」
「<時のすぎゆくまま>、映画『カサブランカ』で歌われたんやが・・・」 

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「胸に沁みます・・・、胸に沁みますが、わたしには思い出すような恋もありません。宮廷での栄華の日々も文献に残るだけで、わたしの記憶にあるわけではないのです。生きてるだけでいいって飼い主は言ってくれますが・・・」

      参考『生命観を問いなおす』(森岡正博・著 ちくま新書 2001)
     『スヌーピーたちのやさしい関係』(チャールズ・M・シュルツ・著 講談社+α文庫) 

 なめろーのひと言「むさくるしい顔でごめんなさい。カット前に録画したものです。投稿順序が逆になってしまいました」
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by yoyotei | 2011-01-16 10:27  

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