春なのだ

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  肉親を失い、家屋を失い、どこまでも続く瓦礫や残骸の中にいて、いったい人はどんな心境になるのだろうか。あまりにも甚大な悲しみに襲われると人は往々にして涙も出ないという。あまりにも大きな喪失感には、ただ呆然と立ち尽くすしかないだろう。
 目標を設定し、努力を重ねてきた、その行為と成果が、一瞬にして崩れ去ることのむなしさ。
 だが、生きてあるものは生きなければならない。悲しみ、虚しさ、失意、絶望のどん底にあっても人は空腹と喉の渇きを覚える。それは生きようとする命の渇仰(かつごう・かつぎょう)だ。やがて、また新たな目標を掲げて人は努力を始める。尊いことだと思う。

 3.11以来、自粛ムードが広がる中で、イベントや歓送迎会の中止が頻発している。私の店も例外ではない。旅館やホテルでも、数百人規模のキャンセルが相次いでいるという。そうでなくても長期不況で苦闘を続けてきている飲食業界では、この時期はせめてもの稼ぎ時だったのだが・・・。
 二次被害という声も聞こえる。東京でデザイン会社を経営するIijimaさんも、仕事にならないと、あきらめ顔を見せた。自粛をしてもだれも喜ばない。経済活動を活性化しなければ被災地を支援する力もしぼむ。
 被災地以外でも雇用不安が拡大しつつあるという。命があること、仕事があること、家族があること、明日があること。それを感謝しながら、被災地でなくても元気を出して頑張らなくてはならない。
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 そうした中で、仲間内の送別会がないわけでもなかった。この夜は市内の総合病院の職員が二次会になだれ込んだきた。外科のManaさん、泌尿器科のKomatuさんが転勤する。

 その病院の院長夫人が釜石で地震と津波に遭遇した。幸い被害はまぬがれて、二日後には無事に帰宅できたとのこと。凄まじい轟音と流されていく人々。地獄を見たらしい。
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 店の常連さんであり、3年前にはインドへ同行した佐藤由弘さんが、月間情報誌『mr partner(ミスター・パートナー)4月号』(発行所株式会社ミスター・パートナー)のトップグラビアに掲載された。4年前に英国南西端ランズ・エンドから最北端のジョン・オ・グローツまで徒歩で縦断した彼を取り上げたものだ。前々回のこのブログ「一日難再晨」で「村上野道クラブ」の主宰者Satoさんとして紹介した人だ。30数年をかけて「日本100名山」すべてを登攀するなど、彼の「登る・歩く」ことへの飽くなき挑戦は衰えない。
 この英国徒歩縦断の翌年にはインド、その翌年にはネパール、さらに翌年にはサンティアゴ巡礼の道(スペイン)を歩いてきた。その間にも信濃川を河口から源流まで歩いたり、私の郷里・島根も歩いたりしている。
 5月4日には42Kmを歩く「大栗田十里遠足」が計画されている。今回で40回目の節目なのだそうだ。なかなかのものである。最初から欠かさず参加している佐藤さんは今回で1,680Kmを歩くことになる。この人、これまでにいったいどれだけの距離を歩いたのだろうか。
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 気仙沼市の沖合い1・8Kmの海上で、漂流物に乗っていた犬が救出された。ペットの被害も気になっていただけに、こうしたニュースは嬉しい。
 先日、週刊誌で瓦礫の中をドロだらけになって歩く犬を見たばかりだった。あの惨状の中を、一心に嗅覚を研ぎ澄ませ、飼い主を捜し求めて歩く犬の表情には鬼気迫るものがあった。

 新潟県の非難所(中越地方)にはペットのスペースが用意されている。阪神・淡路大地震でペットを避難場所へ連れていけない被災者が、ペットと車の中で過ごさざるをえなかったことを教訓に、中越地震のときからペットへの配慮を始めたという。いうまでもないが、飼い主にとってペットは家族と同じだ。

 家の近くでフキノトウを収穫した。なんといっても天麩羅がいちばんだ。春なのだ
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by yoyotei | 2011-04-02 18:58  

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