「妖精のいる森」

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「大滝舞踊研究所」の40周年記念公演が行われた。30年前から関わりがある私は、今回も小道具係やナレーション、そして老人役での出演を要請された。また、3歳からこの研究所で学んでいた中学2年生の孫娘が招かれて『狐火』(演出・振付/富士奈津子 衣装デザイン/並河万里子)を踊った。
 研究生約50人、高校と中等学校ダンス部35名にゲストを加えた出演者のうち、男はヒップホップを踊る3人と、私を含むナレーター2人の5名だけである。 
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 いよいよ開場である。子どもが出演となると、親兄弟から祖父母を中心に1000席がほぼ埋まる。並べられた段ボール箱は出演者たちへの花や贈呈品で埋まる。もちろん、私へのものはない。
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 プログラム第2部は「妖精のいる森」から始まった。

「うす緑の山を越え クリーム色の霧に包まれた谷を越え ポピーの咲き乱れる丘を越え
 その奥に、深い深いその奥に妖精の住む森があるという
傷ついた兵士 恋にやぶれた紳士 母さんのいない子どもたち
昔の思い出をさがして森を訪れた孤独な老人
そんな悲しい人たちが どこからかやって来て 少しだけ幸せをかかえて帰っていく
そんな森があることを知っていますか(略)」

 このオープニングのナレーションをした後、<孤独な老人>役でもある私は杖をついて舞台に出て行く。<悲しい子どもたち>10数人とからみ、スポットライトが消えると上手に去る。マイクのある下手に向かって舞台裏を走る。エンディングのナレーションが待っているのだ。マイクが手渡される。舞台監督が「ナレーション20秒前!」と告げる。荒れた息を整える(なにしろ本当の老人なのだ)。
「10秒前・・・5,4,3,2,1、どうぞ!」
「さあ 扉を開けてごらんなさい 
 妖精たちが待っていてくれるこの森に悲しみをおいて行きなさい
 涙をおいて行きなさい 希望をいだいて 幸せを信じて・・・」
 フウッ!(マイクを遠ざけて息を吐く)

 この扉が「妖精のいる森」への入り口という設定だ。これでも舞台に置かれてライトがあたるとそれらしくなる。道具係の私の作品でもある。
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 緞帳が上がると「狐火」を踊った孫娘のもとへ妹やいとこがかけよった。3人とも同じ髪形をしてご満悦だった。もちろん、私のところへは誰もかけよらない。
 
 この後、私はひとりビールで疲れをいやし、孫たちは月曜日の学校のために帰って行った。
 我が家の「妖精たち」は「狐」のように、たった一晩でいなくなり、後には「孤独な老人」が残された。
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by yoyotei | 2011-11-07 14:53  

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