いつかは消えます

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 記録的な豪雪なのだ、そうだ。日中の気温が7度まで上がった日、近所に住むOgataさんが手伝ってくれて家の前の除雪が驚異的にはかどった。その後は温泉で・・・。
 町内の東林寺(とうりんじ)山門前には「雪トトロ」が出現した。
 それにしても雪というのは厄介なのものだ。積雪4メートル、屋根の雪下ろしはもう7回目、などという人たちの声を聞くとため息が出る。100人近くが除雪中の事故や落雪によって命を落としている。
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 自宅そばの地蔵さんも雪に覆われた。雪を払ったらこの地蔵さん、なんと毛糸の帽子をかぶっていた。どなたの心遣いだろう。
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 除雪を手伝ってくれたOgataさんが、道路わきにうずくまっている狸を見つけた。交通事故に遭った様子はない。逃げもせず、さほどの抵抗もしない狸をOgataさんと一緒に段ボール箱に入れて持ち帰った。
 狸は背中のかなり広い部分の毛が抜けて分厚い瘡蓋(かさぶた)状になっていた。
 一時は与えた水を飲み、Ogataさんの部屋の中を動きまわったが、翌朝には冷たくなっていた。背中の傷が致命傷だったとは思えない。その傷は相当に古く、瘡蓋も亀の甲羅のように硬くなっていた。ただ、その硬い甲羅状の瘡蓋が、何箇所も深くひび割れているのが痛々しかった。
 Ogataさんは、近くの空き地の雪を掘り、土を掘って狸を埋葬した。

 何年か前に、自宅周辺に1匹の野良猫が出没するようになった。玄関前にエサを置いてやっても遠くからこちらをうかがうだけで近づいてこない。長い日数がかかったが、その猫がようやく目の前でエサを食べるようになった。それでも、もう馴れたかなと手を出しては、何度も爪を立てられた。
 その猫が、あるとき玄関の戸を開けると、すっと家の中に入ってきた。初めてのことだった。犬が激しく吠え立てたが、臆することもなく部屋の隅にうずくまった。身体に触れてもじっとしている。翌日、猫はそのまま息を引き取っていた。
 生き物が自分の死を悟った時の行動には、神秘的な達観、崇高な諦念を感じる。
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 両腕に抱きかかえるほど(?)届いたのは、いつの頃だっただろう。
 この日、セルフ給油のスタンドで男性店員からチョコレートをもらった。そのチョコレートを、女っ気のない酒場で、愛・義理・友、いずれのチョコにも縁のない男3人がカリカリかじりながら酒を飲んだ。
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 いつの時代の、どこの国のことかは忘れたが、刑罰として山上に重い石を運び上げるというのがあったらしい。ようやく持ち上げた石は、刑吏によってか自らによってか、山上から転げ落とされる。そして、また苦しい思いをして山上へ運び上げる。また転げ落とされる、運び上げる。それを永遠に繰り返す。無目的で達成することのない、徒労だけの苦役を強いられる罪人は力尽きる前に発狂するという。
 除雪をするたびにこの話を思い出す。もちろん、除雪は刑罰でもなければ、けっして徒労ではない。家を守り、生活を確保するための闘いだ。ただ、春が来ると解けてしまうのにと思うと、雪がうらめしくなる。明日あたりからまた大雪に見舞われるようだ。やっと除雪した跡に、また雪が降り積もる。

「いつかは消えます」
 冒頭の東林寺の、これは戒語。消えていくのは雪だけではない。いつか、あれもこれも・・・。
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by yoyotei | 2012-02-15 13:03  

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