春の弥生のこのよき日
東京からHitomiさんとMasaeさんがやってきた。二人とは10年ほど前にインドで出会った。その後何度か寝袋持参でやってきては、店の二階に泊まっていった。バックパッカーの乗りだ。Masaeさんは2年ぶり、Hitomiさんは何年ぶりだろう。彼女はこの間に結婚もした。
到着直後の「朝ビー」から始まって、昼は温泉、夜は「夭夭亭」で客たちと飲んで談笑しながらの手伝い。過去数回の来店で知り合いもでき、すっかり店に馴染んできた。今回もMikaさんやYumikoさん、Mike、Morimoto、Murataさんなどとの新しい出会いがあった。世界を旅してきた二人である。初めて出会った人と心を通じ合うのに時間はかからない。
この日は市内の高校の卒業式があった。先生たちも少し肩の荷を降ろしたことだろう。
誰か「越の寒梅」を置き忘れてあるんですがねえ。しばらくは預かっていますが・・・。
「飲んじゃうぞ」
卒業やそれぞれ風の中へ散り 鷹羽狩行
「親子酒」という落語がある。このIshidaさん親子の飲みっぷりを見ていてその落語を思い浮かべた。
大酒を飲んでベロベロになった親父。そこへこれまたグデングデンに酔っ払った息子がご帰還。
親父は息子をにらんで言う。
「なぜお前はそんなに酒を飲みたがる。お婆さん、こいつの顔がさっきから三つに見えます。
化け物だね。こんな者に身代は渡せませんよ」
息子が言う。
「おいらだって、こんなぐるぐる回る家は欲しくない」
まあ、落語はともかく、こんな風に楽しく飲める親子は、そうざらにはいないだろう。
「刺さる!」という表現を教えてくれた息子のSyotaさん。「夭夭亭」を気に入ってくれたらしくて何度も「刺さる!」を連発した。
1週間後、Syotaさんは大勢の仲間を連れて来てくれた。嬉しくて「刺さった」よ。
Yumikoさんのバイオリン、Hitomiさんのボンゴ、私のギターで演奏したあの夜の「コーヒールンバ」。Syotaさん、刺さったかなあ。
3月になって当地は「第13回・町屋の人形さま巡り」が始まった。江戸から平成にかけての四千体を760軒の町屋で展示する。村上の地域おこしのさきがけとなったイベントだ。
「春の弥生のこのよき日 なにやら嬉しいひな祭り」
二人とは3年後に、パハルガンジ(ニューデリー)の「ゴールデン・カフェ」で会う約束がある。
二人の来店で春が一足早くやってきた。気の重い確定申告が終われば、私の春は全開になる。
by yoyotei | 2012-03-06 08:35